美術評論家北澤憲昭氏の代表作と言えるんじゃないかな。
美術手帳100周年号『日本近現代美術史』にも執筆していましたね。
美術というのは海の向こうの考え方であってそれ以前の日本には「美術」という概念はなかった!?美術と言う言葉は、明治の開国の際に、翻訳語として無理やり日本語にして日本文化に当てはめようとしたもの。
『美術』って言葉が外国からやってきたのはいいけれど、 どんなものが美術なのかさっぱり分からない。それで当時日本にあるモノの中から、美術と呼ばれそうなものをピックアップしていった。でもそのピックアップしていった中には貨幣だとか、花の描かれた壺だとか色んなモノが混ざってて、 今で言う美術とは似て非なるものだったわけ。
それで
「なんか違うよねー」
って海の向こうの美術作品たちをみて思った日本人たちが徐々に美術ジャンルをふるいにかけていった。そうするとふるいから落とされるものがいっぱいあった。
んでそのふるいから落とされたものに名前をつけようってことになった。それが工芸。
だから日本の美術というものは生まれたときから曖昧で、辻褄が合わないものになったのです、、、 という様な内容になっております。
ちなみにさらりと読める内容じゃないし、美術史の専門書といったところなので、素人向けではありません。
でも美術を勉強している人は読まなければまずいでしょうね。
美大に通う人には必読の本。
- 「美術」概念の形成とリアリズムの転位
- 国家と美術-「日本美術史」という枠組み
- 文展の創設
- 国家という天蓋―「美術」の明治二〇年代
- 美術における日本、日本における美術―国境とジャンル
- 裸体と美術―違式桂違条例を軸に)
- 美術の境界―ジャンルの形成-「日本画」概念の形成
- 「工芸」概念の成り立ち
- 裏返されたモニュメント―彫刻の近代化と銅像
- 制度から主体へ-工業・ナショナリズム・美術
- 印象と表現―日本印象主義のアポリア
- 終章.日本近代美術史研究の課題と可能性
もっと詳しく境界の美術史―「美術」形成史ノートをみる。