読んでしまいました。
あの岡野雅行さんの本です。
もちろん岡野さん自身はアートの世界とは関係ないのですが、金属を加工して作品を制作しているわたくしとしては読まずにはいられない。
痛くない注射
『痛くない注射』の針を生み出したことで有名な岡野さん。なにがすごいってその発想がすご い!!
注射針というのはパイプ状の金属でできているのだけれど、岡野さんは『絞り』とよばれる金属の板を加工する技術で針をつくって しまわれたお人。『絞り』とは鍋やらボールやら、板状の金属をおけ状にする技術。『絞り』を知っている人ならばその発想のすごさが、鳥肌モンでわかろうか と思いますが、絞りを知らないとわからないかも。。
『人生は勉強より「世渡り力」だ!』の概要
世界一のモノがつくれるだけじゃ飯は食えない
アートに関する本しか紹介しないこの書評空間。
岡野さんのこの本を取り上げたのもちゃんと理由があります。
モノをつくる世界というのは技術の習得にものすごいコストと労力がかかるにもかかわらず、そのことの評価が非常に見えづらい世 界。それは彫刻でも、現代アートでも工芸でも、金属加工業でもおんなじ。
だからその世界に携わる人たちは、それに向かってまっしぐらになりがち、というよりもまっしぐらじゃないとなかなかものになら ない、という状況があります。
でもそのことと、それでお金を稼ぐこととは全く別物で、世界一素晴らしいものを作り上げたとしてもそれだけでは飯は食 えない。
腕だけじゃだめなんだ!
じゃあ一体何が必要なのか?
岡野さんはその技術以外に必要なものを『世渡り力』と呼び、その重要性を実体験に基づいて 痛快に語りつくす。
何を隠そうこの本は、世界一の職人と称される岡野さんが冒頭一番
『腕だけじゃだめなんだ!』
という一言から始まるのだ。すごくないですか??
アートの世界だって、いくら世界一の作品を作れたってそれだけじゃ食えない。ただでさえ食えない世界だからこのことは非常に重 要なんだけど、アーティストって人種はそのことに無頓着、無関心なもんだから、いい作品作る作家が次から次へと食えなくなって命を落としていく。。い い作品が作れるだけじゃ生きていけないのです。
『人生は勉強より「世渡り力」だ!』おすすめポイント
『人生は勉強より「世渡り力」だ!』はそんないい作品を作ってるのに食えていけない人たちに是非読んでもらいたい本。
文中の岡野さんの言葉の中で気になった言葉をいくつか
- 変わり者って言われるような人間じゃなきゃダメなんだ。変わってるから、人と違う発想が できるんだし人と違うものが作れるんだよ。
- ………いい思いは自分だけでしないってことなんだよ。
- 自分の仕事は安売りしちゃダメなんだ。そのためには、人にできないことをやらなきゃな。 誰でもできることなんてのは、相手の言い値でやるしかなくなるんだよ。できないことだから、値段を自分でつけられるんだ。
- 必要なこと意外ものを言わない口下手の職人も少なくないけど、俺は違う。どんな大企業とだって平気で渡り合える。へいこ らする気はさらさらないね。
- ………仲間からの情報は貴重だ。なかには運命を決めるような情報だってあ る。
岡野さんのいう『世渡り力』とは人と情報の重要性を認識し、それを如何にマネジメントしてみせるかということに尽きる。
アーティストとして、職人として、作家として生きてみたいひと。読んでみてはいかがでしょう。
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