第3回目となるアートフェア東京2008が4月4日から6日まで、東京国際フォーラムにて開催された。 アートフェアとは「現代美術の見本市」のようなもの。ディーラー、コレクター、美術関係者の交流の場としても機能する。 世界各国で様座なアートフェアが開催されており、日本で行われはじめたのはつい最近とのこと。
大手メディアなんかで「現代アートバブル」なんて評されたりしている最近のアートシーン。 もちろんそうであったらすごく嬉しい事ですが、一体本当にそうなのでしょうか?
まず今年のアートフェア東京は昨年より一万人強増の4万千人。 売上高は10億ほどと公表されている。参加ギャラリー数は108、計2,500点の作品が出展された。 入場者は増加したものの、売り上げ高は横ばい。 聞くところによれば売り上げの半数以上が海外コレクターによるという。 中でも中国人の買いっぷりはすごいらしい。
世界のアートフェア-スイスバーゼル
世界各地で開催されるアートフェアの中でも特に有名なのがスイスのアートフェア「アートバーゼル」。 世界各国から800軒以上のギャラリーが参加を申請し、その中で選ばれた300軒が出展を許されるそうだ。 つまり出展作品は厳しいふるいを通過したものだけが並ぶので、質が高いとされる。 5日間で5万人の入場者を誇るが、驚くべきはその売上高。事務局は公表していないが、数百億はくだらないという噂だ。
しかも本気で作品を購入しようと思って開催初日の朝に行って開場を並んで待ったとしても、もう時すでに遅し。。 前日に主要作品はほとんど売れてしまうそうだ。 世界中のVIP(very important person)たちが自家用機で乗り付けて文字通りの「大人買い」を敢行しちゃうんだと。 好調なんて評されるアートフェア東京だけど、残念ながらケタが違う。
世界的に「アート市場はバブル」というのは真実であると見てよい。事実ここ五年ほどの間、オークション市場最高値が次々と書き換えられている。ポロックの《No.5,1948》は1億4000万ドル(163億円)だそうで、もはや幾らか数えるのにも一苦労のゼロの数。。 現代美術作品でも史上最高値がついたので試しにゼロの数を数えて頂きたい。最高値をつけたのはマーク・ロスコの「White Center (Yellow, Pink and Lavender on Rose)」で72,800,000ドル。
むろんこれらの金額にはオイルマネーが絡んでいるには間違いない。
美術品の桁違いの金額とは歴史を紐解けば分かるように、バブルマネーによるものだ。 行き場のないオイルマネーが投機目的を伴ってアート史上に向かう。これが現代の海外アートマーケットの実際だ。
ということで東京アートフェアに戻ってみよう。果たしてオイルマネーが流入しているだろうか?本当に世界中から注目され認知されているだろうか?マネーの動きを見る限りは残念ながら答えはNOだ。
ただ、何よりも重要なことは、一般市民レベルで現代のアートを見て楽しみ、作家を育てる土壌を作り上げ、そしてクリエイティブの価値というものを日本に根付かせることだ。それは裏を返せば、「価値」というものは創造するものであり、また与えられるものではなく、一人ひとりが自らの中で作り上げるものなのだ、ということを広くみんなが血肉とすることだ。
いいものはメディアによって先導されるものでも世間が決定するものでもない。 東京アートフェアの今後に期待したい。