地金を得る古来よりの秘宝
今回は古来(?)に行われていた、地金つくりの秘法「湯床吹き」を公開します。
「湯床吹き」とは、溶かした金属をお湯の中に流し入れ地金をつくる技法のこと。
ほかに地金を作る方法として考えられるのは、溶かした金属を金型(鉄で作られた鋳型)に注ぎ込む方法。でもこの方法よりも、湯床吹きのほうが、流し込んだ金属が凝固する時に発生するガスを排出でき、より良質の地金を得られる。 ガスの混入した質の悪い地金は、鍛金のように叩き伸ばすと途中で割れちゃう。最近、鍛金家の関井一夫氏がこの湯床吹きについての研究をしていたので、詳しくは氏の研究論文を参照されたい。
銅の湯床吹きの手順
今回は銅の湯床吹きに挑戦!!
まず黒鉛坩堝に米ぬかと菜種油をませ合わせたものをぬる。
その中に銅を入れて、ガス炉で溶かす。
このガス炉はアメリカ製。
坩堝を鉄の「箸」でつかみガス炉へぶち込む!!
写真の人物は鉄のアーティスト田中幹と若森奏。
溶けたかどうかを確認。
また溶けた金属が酸化してしまうのを防ぐため、硼砂(ホウシャ)を投入します。
お湯をためた容器の中に、湯床を置く。
この湯床は銅の構造に帆布を張ったもの。
湯床のキモは、湯の量、温度、水面から湯床までの距離、湯床から容器の底までの距離。
これが湯床。
欲しいかたちによって、四角やら円形やらの湯床をつくりましょう。
さあこれから溶けた銅を湯床に流し込みます。 ちなみにこの湯床吹きは ひとつ間違えると爆発する恐れがあり大事故につながる事も… あります。 やってみたい方は自己責任で!! 責任は負えませんので…
さあ流し込みます!!
この際湯の温度が低すぎると爆発するようです。湯の温度及び量と、水面からの距離等によってそれらの数値にはいくつかのバリエーションが考えられます。 写真のような場合には湯温は60度くらいが良好でした。
流した後は湯をかき混ぜて、水温が均一になるように、流した金属のまわりだけ高温にならないようにします。
はい、完成☆出来上がった銅の地金
この得られた塊を「山おろし」と呼ばれる方法により板状に伸ばします。
山おろしとは金塊を金槌で叩き伸ばしていくもの。
如何でしたでしょうか? 冒頭にも述べましたが、金属の型に流し込む方法では発生するガスを取り除くのが難しいのですが、この湯床ならば簡単にガスをとり除けて、良質な地金を得ることができます。
このような、古来より行われてきた方法の多くは、科学的に研究され、言葉により蓄積されてはいませんが非常に理にかなったものです。 そう、びっくりするくらい有益です。 しかし、言葉により説明され、情報として蓄積されていないがために、今の世の中では利用されず、また知られてもいないため闇に埋もれてしまっています。 これらが情報として世の中に出回れば多くの利益を私たちにもたらしてくれることは間違いないでしょう。新たなビジネスを創出することにもなるのではないかと常々思う所です。