幼稚園に通っていたような年頃のこと、私はちょうど父の会社の社宅に住んでいた。その室内の壁という壁にはクレヨンやら、鉛筆やらで描かれた「絵画」に満 ち溢れていた。父と母はその高尚なる「絵画」を発見するたびに、鬼のような形相をまとい雑巾片手にその「アート」をそれは見事に消し去っていった。
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アーティストとは総じて変人が多い。
幼少のころにセイサクした私の崇高なる「落書き」は即時撤去されてしまったが、 ロンドンの至るところにはそんな落書きに溢れている。当然それは、つまり街中の壁に落書きをするのは法的に「財産棄損」「不法侵入」ということになるのだが、当のロンドン市民はこれを大歓迎しているという。落書き人の正体は「バンクシー(Banksy)」というアーティスト。その素性は明らかにされていないのだが、74年生まれの英国人だとされる。
バンクシーの作品
「アートテロリスト」とも称される彼の作品群は大きく2つに分けられる。一つが例の「壁画」というか「落書き」というか。もう一つが美術館で開催されている展覧会に忍び込み、開場に勝手に自分の作品を展示してしまうというもの。どちらにせよアルカイダもびっくりな、なんとまあ見事なテロだろうか。
90年代初期から始まったらしいバンクシーの”テロ”は、額面通りテロらしいもので警察から逃げ回りながらのものだったようだが、ロンドンのギャラリーが代理人となったころで人気が出て、今や一作品数千万の値で取引されているとの事。 その落書き手法はスプレーによるステンシル画による。
展覧会へのテロで有名なものはラスコー洞窟壁画風の落書きをした石を大英博物館に置き逃げしたもの。置き逃げだけでもびっくりなのに、博物館側は全く気づかず放置してたとの事である。
イギリスという国は音楽でもアートでもファッションでもムーブメントでもなかなかおもしろい表現を生み出す土壌がある。 仮定法を使うのはほとんどなんの意味もなさないけど、もしバンクシーが日本で生まれてこんなことやったら絶対に表舞台には出てこないだろう。それならまだ しも”檻”の中で暮らしていないとも限らない。まぁ日本からはあんなアーティスト?出てきやしないだろうけどね。特に我が家からは絶対に出てきやしないのである。。
photo credit: 23dingenvoormusea
banksy official website
Banksy work painted over in error(BBC)