
(08.4.29)
幼稚園に通っていたような年頃のこと、私はちょうど父の会社の社宅に住んでいた。その室内の壁という壁にはクレヨンやら、鉛筆やらで描かれた「絵画」に満ち溢れていた。父と母はその高尚なる「絵画」を発見するたびに、鬼のような形相をまとって雑巾片手にその「アート」を、それは見事に消し去っていった。
アーティストとは総じて変人が多い。
幼少のころにセイサクした私の崇高なる「落書き」は即時撤去されてしまったが、
ロンドンの至るところにはそんな落書きが溢れている。当然それは、つまり街中の壁に落書きをするのは法的に「財産棄損」「不法侵入」ということになるのだが、
当のロンドン市民はこれを大歓迎しているという。落書き人の正体は「バンクシー(Banksy)」というアーティスト。その素性は明らかにされていないのだが、74年生まれの英国人だとされる。
「アートテロリスト」とも称される彼の作品群は大きく2つに分けられる。一つが例の「壁画」というか「落書き」というか。もう一つが美術館で開催されている展覧会に忍び込み、開場に勝手に自分の作品を展示してしまうというもの。どちらにせよアルカイダもびっくりな、なんとまあ見事なテロだろうか。
90年代初期から始まったらしいバンクシーの”テロ”は、額面通りテロらしいもので警察から逃げ回りながらのものだったようだが、ロンドンのギャラリーが代理人となったころで人気が出て、今や一作品数千万の値で取引されているとの事。 その落書き手法はスプレーによるステンシル画による。
展覧会へのテロで有名なものはラスコー洞窟壁画風の落書きをした石を大英博物館に置き逃げしたもの。置き逃げだけでもびっくりなのに、博物館側は全く気づかず放置してたとの事である。
イギリスという国は音楽でもアートでもファッションでもムーブメントでもなかなかおもしろい表現を生み出す土壌がある。 仮定法を使うのはほとんどなんの意味もなさないけど、もしバンクシーが日本で生まれてこんなことやったら絶対に表舞台には出てこないだろう。それならまだしも”檻”の中で暮らしていないとも限らない。まぁ日本からはあんなアーティスト?出てきやしないだろうけどね。特に我が家からは絶対に出てきやしないのである。。
(08.4.18)
第3回目となるアートフェア東京2008が4月4日から6日まで、東京国際フォーラムにて開催された。 アートフェアとは「現代美術の見本市」のようなもの。ディーラー、コレクター、美術関係者の交流の場としても機能する。 世界各国で様座なアートフェアが開催されており、日本で行われはじめたのはつい最近とのこと。
大手メディアなんかで「現代アートバブル」なんて評されたりしている最近のアートシーン。 もちろんそうであったらすごく嬉しい事ですが、一体本当にそうなのでしょうか?
まず今年のアートフェア東京は昨年より一万人強増の4万千人。 売上高は10億ほどと公表されている。参加ギャラリー数は108、計2,500点の作品が出展された。 入場者は増加したものの、売り上げ高は横ばい。 聞くところによれば売り上げの半数以上が海外コレクターによるという。 中でも中国人の買いっぷりはすごいらしい。
世界各地で開催されるアートフェアの中でも特に有名なのがスイスのアートフェア「アートバーゼル」。 世界各国から800軒以上のギャラリーが参加を申請し、その中で選ばれた300軒が出展を許されるそうだ。 つまり出展作品は厳しいふるいを通過したものだけが並ぶので、質が高いとされる。 5日間で5万人の入場者を誇るが、驚くべきはその売上高。事務局は公表していないが、数百億はくだらないという噂だ。
しかも本気で作品を購入しようと思って開催初日の朝に行って開場を並んで待ったとしても、もう時すでに遅し。。 前日に主要作品はほとんど売れてしまうそうだ。 世界中のVIP(very important person)たちが自家用機で乗り付けて文字通りの「大人買い」を敢行しちゃうんだと。 好調なんて評されるアートフェア東京だけど、残念ながらケタが違う。
世界的に「アート市場はバブル」というのは真実であると見てよい。事実ここ五年ほどの間、オークション市場最高値が次々と書き換えられている。ポロックの《No.5,1948》は1億4000万ドル(163億円)だそうで、もはや幾らか数えるのにも一苦労のゼロの数。。 現代美術作品でも史上最高値がついたので試しにゼロの数を数えて頂きたい。最高値をつけたのはマーク・ロスコの「White Center (Yellow, Pink and Lavender on Rose)」で72,800,000ドル。
むろんこれらの金額にはオイルマネーが絡んでいるには間違いない。
美術品の桁違いの金額とは歴史を紐解けば分かるように、バブルマネーによるものだ。
行き場のないオイルマネーが投機目的を伴ってアート史上に向かう。これが現代の海外アートマーケットの実際だ。
ということで東京アートフェアに戻ってみよう。果たしてオイルマネーが流入しているだろうか?本当に世界中から注目され認知されているだろうか?マネーの動きを見る限りは残念ながら答えはNOだ。
ただ、何よりも重要なことは、一般市民レベルで現代のアートを見て楽しみ、作家を育てる土壌を作り上げ、そしてクリエイティブの価値というものを日本に根付かせることだ。それは裏を返せば、「価値」というものは創造するものであり、また与えられるものではなく、一人ひとりが自らの中で作り上げるものなのだ、ということを広くみんなが血肉とすることだ。
いいものはメディアによって先導されるものでも世間が決定するものでもない。
東京アートフェアの今後に期待したい。













